夢を追いかけることと、安定した生活を求めることは、よく対立して語られます。

音楽大学に進学する人は、ほとんどが音楽家になりたい、あるいは音楽に関係する仕事をしたいという夢があることがほとんどだと思いますが、現実はどうなのでしょうか。また、夢が叶わなかった場合はどのような進路を進むのでしょうか。見ていきましょう。

なお、この記事に出てくる数値は、主に首都圏の音大が公開している情報や、企業の情報を参考にし、予想して作られたものであり、正確なものではないことをご了承ください。

大学卒業後の進路の割合

進学 25%

音楽活動 7%

企業 30%

音楽教室 10%

教員 12%

公務員 1%

未定 15%

ほとんどの音大で大体このような構成になっています。音楽活動で生計を立てられている人は15人に1人ほどで、音楽家になるという夢を叶えるのは厳しいことがわかります。とはいえ、進学してさらに研鑽を積んだり、夢を叶えて企業に就職したり教員になった人が大勢いることも事実です。

大学卒業後の進路が未定が15%というのは気になりますが、一般大学でも進路未定は10%~20%と言われており、特殊なものではないことがわかります。

進学の場合

進学する場合はほとんどが大学院の修士課程に進学となります。また、大学院に進学する場合も、ほとんどが内部進学となります。仮に8割が内部進学をすると、卒業者全体の20%ほどが内部で大学院に進学することになります。

残りは、外部の大学院、海外留学、研修所となります。留学先としては、アメリカ・フランス・ドイツ・イタリアが多いですが、ロシアやハンガリーなど多くの選択肢があります。研修所は様々なパターンがありますが、オペラやミュージカルの研修所が多く、日本にも海外にも選択肢があります。

修士課程や海外留学を修了すると、また同じように進路の分岐があります。進学を続けていった場合、30歳になっても学生を続けながら教えたり演奏活動を通じて収入を得ているケースもあります。

教育系の場合

教育には大きく分けると、次の4通りがあります。

・個人

・音楽教室

・教育機関(小中高)

・研究機関(大学・大学院)

個人で教える場合は、自宅もしくは家庭教師として、1時間あたりの値段を生徒に提示して合意をとるのが大体のパターンです。ただし、これだけで生活の収入を得るのは難しく、副業あるいは共働きとしての収入になることが多いでしょう。

音楽教室で教える場合は、音楽教室に講師登録をして決まった時間に教えに行くのが一般的です。週の時間を少なくすればアルバイト感覚になりますし、毎日数クラスを持てば生活の軸にすることも可能です。

時給は1300円~2500円程度が相場です。

教育機関で教える場合は、小学校・中学校・高等学校それぞれに教員免許があり、それを大学在学中に取得して、教員採用試験に合格してから勤務する、という形になります。年収は330万円~450万円程度です。

研究機関で教える場合は、基本的には修士号あるいは博士号を持っている必要があります。極めて実績が高い場合は、大学卒業の学位のみの場合もあります。一般的なルートとしては、

助手→非常勤講師→常勤講師→准教授→教授

と進むことになります。常勤講師になると、年収は500万円~700万円となり、教授まで進むと年収は1000万円程度になります。

研究機関に在籍するということは、音楽活動で極めて高い実績を継続的に続けているということです。ですから、最も音楽家として成功した例といってよいでしょう。

就職の場合

一般的な大学だと就職率は70%程度ですが、音大の場合50%ほどになっています。

そのうち6割が企業に就職、2割が音楽教室、2割が教育・研究機関です。

企業の内訳は、音楽に関連する会社がやはり多く、音楽事務所、音楽ホール、ゲーム会社、楽器店、音響関係、楽譜出版社など様々です。また、意外にも多い就職先としては旅行関係あるいは航空関係があり、短期留学経験者が外国語に堪能であったり、人とコミュニケーションを取ることが得意であったりすることが多いことが有利に働くようです。

音楽活動の場合

音楽活動として、最も目指されているものはオーケストラへの所属です。在学中から様々なオーケストラのオーディションを受け、1席を数十人から数百人で争う非常に厳しい道です。オーケストラに在籍するということは、まさに音楽家として生きていくことです。日本オーケストラ連盟に38個のオーケストラが所属しており、そのオーケストラを目指すということになります。年収は250万円~1000万円と幅があります。オーケストラのみで生活するというパターンよりも、教えたり、個人の音楽活動と並行する場合が多いようです。

さらに厳しく、そして輝かしい道はソリストです。難関コンクールを突破し、有名音楽事務所に所属した場合の一晩の演奏会の収入は30万円~100万円ほどあり、1週間に一度演奏会があれば、年収は数千万円にもなります。世界で有名な演奏家になれば、年収が1億円を超えることもあるでしょう。また、音楽家は80歳になっても現役で活躍できる職業です。人生が音楽そのものとなるソリストは究極の目標と言えます。

また、音楽事務所に所属せずに、フリーランスとして活動する音楽家もいます。自分の演奏に価値を付けて活動することになるため、年収を一概に言うことはできません。有名な演奏家・作曲家でもフリーランスで活動していることがあります。

その他の場合

その他のケースとして、実家を継ぐ、起業する、NPO法人で活動する、パートナーに収入を任せて家庭を支える、などのケースがあります。これらに音楽大学の経験が生かされる場合もあれば、全く関係ないこともあります。

熱意をもって音楽に取り組もう

ここまで、音大卒業後の様々な進路を見てきましたが、多種多様な進路があることがわかります。

音大はもともと専門性が非常に強いため、集まる学生も熱意を持っていることが多いです。熱意を持って学んで研鑽を積んだ経験は、必ず人生を豊かにしますし、それが収入につながることも多いことでしょう。

音大卒は将来が不安という意見も多くありますが、今日では音大卒は強みとすることができます。

ぜひ熱意を持って音楽に取り組む学生生活を送ってください。