なかなか直感的に読むのが難しいのが「コード記号」です。さらに厄介なことに、コード記号は本によっても全然違ったりします。コード記号に慣れてきた!と思ったらまったく分からない記号が出てきてくることもしばしばです。今回の記事では、様々な書き方と、簡単な考え方をまとめました。またコードの見やすい一覧表も作りましたので、ぜひ活用してください!
3つの「超基本」コード
とりあえず知っておいた方が良い3つのコードがあります。
メジャーコード
マイナーコード
ドミナントコード(セブンスコード)
です。
この3つのコードさえ覚えてしまえば、コードの8割は読めますし、あんまりオシャレな曲でなければ、この3つだけで出来ていることも多いです。
しかし、よく使うだけあって、書き方は様々です。例えば、Cメジャーコードの書き方は次のようなものがあります。
マイナーコードはこんな感じです。
・・・多すぎてもう無理・・・?
・・・ちょっと待って!まだ帰らないで!!
たしかに書き方は多いですが、考え方はどれも一緒です。メジャーコードなら英語の「major」をどう表すか、マイナーコードなら英語の「minor」をどう表すか、その方法が人の数だけあるだけです。楽譜というものは伝わりさえすれば良いのですから、みんな好き勝手に書いているのですね。
大切なのは、どのようなコードがあって、それがどのように呼ばれているか、そしてどのように書いたら誤解なく伝わるか、です。そんな思いでコードを勉強していきましょう。
では、次からたくさんのコードを紹介していきます。
三和音(トライアド)のコード
構成音が3つだけ指定されている三和音のコードを見ていきましょう。基本的にはルートと第三音と第五音が何の音かを決定します。
第五音が完全5度(min・maj・sus4)
三和音で第五音が完全5度であるようなコードは3つあります。
書き方は色々ありますが、マイナー、メジャー、サスフォーという名称を覚えていれば、そこまで混乱はしません。メジャーコードに△を使うのは、初めて見たときはびっくりするかもしれませんが、ジャズ界隈では非常に良く使います。
サスフォーを表す固有の記号はありません。
第五音が完全5度ではない(dim・aug)
第五音は完全5度で使われることが多いですが、例外もあります。その代表はディミニッシュ・コードとオーギュメント・コードです。不協和感が強く、オシャレな和音です。
機能的と書いた記号は、マイナーコードやメジャーコードの変形ということが強調されていますが、dimやaugと書いたり、記号を使って書いた場合は、さらに音が増えた時や、アドリブをするときに使える音まで、多くの意味が込められています(後述のコードスケールを参照)。いずれにしてもどれも良く使う記号となっています。
四和音(テトラッド)以上のコード
まずは四和音のコードを見ていきましょう。
第五音が完全5度(m7・7th・M7・7sus4)
四和音のコードも、第五音が完全5度であることがほとんどです。そのようなコードはメジャー7th、ドミナント7th、マイナー7th、サスフォーの4つが基本になります。
マイナー7thはマイナーコード、メジャー7thはメジャーコードを引き継いでいることがわかります。ドミナントコードは何も記号を付けないというところが特殊なポイントですが、これはこの記事の一番初めに紹介したように、もっとも基本的なコードだからですね。
第5音が完全5度以外(dim・half-dim・aug)
このような四和音はたくさんありますが、よく使うコードを紹介します。ディミニッシュ7th、ハーフディミニッシュ、オーギュメント7thです。ディミニッシュというと、三和音ではなく、こちらの四和音のディミニッシュのほうを指すことが普通です。
ここにきて、記号の〇や∅といった記号の素晴らしさに感動しますよね。明示的に書いたり、機能的に書くのはかなり無理がありますが、記号で簡潔に表すことができます。ジャズで「ー△〇∅+」などの記号が使われることが多いといったのは、このような複雑なコードを日常的に使うからなのでしょう。
その他の四和音、五和音など(6th・9th)
三和音に第六音を追加したり、四和音からさらに第九音、第十一音、・・・と追加していくことがあります。ここでは、六の和音(6thコード)と9thコードを紹介します。
このようなコードはよく使います。mやMがついていなければドミナントコードの派生形となり、このように簡潔に書くことができます。
6と書いたらルートに対し長6度上の音、9と書いたらルートに対して長9度上の音を付け加えます。たとえばマイナーコードの派生形の6thコードや9thコードも、6は長6度、9は長9度を表します。
次のような短6度や短9度を使う和音に注意しましょう。
短6度や短9度のときは、♭を明示する必要があります。
付加和音と省略和音
ここらへんから複雑なコードとなってきますが、考え方がわかれば迷いません。
付加和音(add2・add4)
また、第七音、第九音・・・のように規則的に音を付加するのではなく、ある音をただ単純に付け加えたい、というときはアドコードを使います。
アドツー(add2)はよく使いますが、アドフォー(add4)はほとんど使うことがありません。非常に不協和な音で、あまりにも性格が強すぎるために、曲の雰囲気を破壊してしまうからです。とはいえ、用いられている曲が無いわけではありません。
省略和音(power 5・omit)
何らかの事情で、コードの中のこの音は弾いてほしくない!というパターンがあります。あまり見かけませんが、良く登場するのは、第三音が入っていない、完全5度だけの和音でパワーコードと呼びます。
非常に硬く、強い音ですので、使いどころによっては素晴らしい効果を上げます。マイナーかメジャーか分からないという点でも特徴的なコードです。
第三音や第五音はコードの基本の音ですが、これが省略されると、特殊な響きなるため、あえて弾いてほしくないときは明示する必要があります。パワーコード以外のときは、オミットコードが使われます。
わざわざオミットコードと書くからには、省略されていることが非常に特徴的な響きである必要があります。実際の演奏ではコード内の音が弾かれていなかったとしても、わざわざオミットと書かないことのほうが普通です。
特殊なコード
ここまでに紹介してきたコードを使っても表せない特殊なコードを見ていきましょう。
オルタードコード(alt.)
オルタードコードは少し特殊な意味を持つコードで、オルタードスケールの音を使ったコードとなります。機能としては、ドミナントコードになります。
ここで書いたオルタードコードは一例で、様々な可能性があります。
分数コード(on)
ここまで、全てルートがベースになるようにコードを書いてきましたが、ベースをルート以外であると明示したいときには、分数のように書いて、分母にベースを書きます。独特の浮遊感が出て、効果的なコードです。
コード無し(N.C.)
ドラムソロのときや、単旋律になるようなところでは、コードを演奏してほしくないこともあります。そのような時は、N.C.(ノン・コード)と書きます。
コードスケール
耳コピをしていたり、作曲していたり、編曲中のメモをしていたり、といったときには、細かいコードの構成音を全て書くのではなく、適当に省略したほうが便利なことがあります。速く書くことができるほか、コードから自由に音を選ぶことができるからです。そんな時には、ーや〇や△といった記号を使って書くと便利です。
また、コードの背景にはコードの元となるスケール(音階)があります。それを知ると、コードに11や13という数が出てきたりしても正しく音を把握することができます。
いままで全てルートをGにしてきましたが、Cメジャーでよく使われる形に直して一覧表として紹介します。
・ベーシストの方
小節の頭をルート(Root)にして、そのほかの拍はスケール内の音から選べばうまくいきます。
・伴奏(ピアノやギター)の方
緑色で色を付けた音を使いながら、オレンジ色のアヴォイドノート(Avoid)を避けて和音を作ればうまくいきます。アヴォイドノートを使いたいときは半音上げるとうまくいきます。ベーシストがいれば、ルートを弾く必要はありません。
・ソロ楽器の方
スケール内の音を自由に使って旋律を作ってみましょう。アヴォイドノートを避ける必要もありません。アヴォイドノートをあまり強調しすぎると、不協和感が強くなりますが、その不協和感すらも活用していきましょう。
知らないコードに出会ったら
この記事で、ルートがGのコードだけでも40種類以上のコード記号を紹介しましたが、それでもまだ全てのコードを紹介するには程遠いのが現実です。とはいえ、ここまで理解ができていれば、どんなコードに出会っても、想像して読み解くことができるはずです。
また、書き方にも様々な流儀があります。あまり見慣れない書き方に出会っても、柔軟に読むようにしていきましょう。
書く側になったときは、普段自分が使い慣れている書き方を採用すればOKです。ただし、あまりに我流になりすぎて人に伝わらないと本末転倒ですので、誤解の無いような書き方をするように気を付けましょう。