ジャズでは、テーマとなる音楽を全員で演奏したあと、一人ずつソロを回していき、最後にまたテーマを演奏して終わる、という形をとるのが一般的です。ソロのときには、テーマのコード(和音)をそのまま使って、自由に即興で演奏します。テーマがある程度わかるように演奏する場合もあれば、原型をとどめないほど自由に演奏されることもあります。このテーマは発想次第でどんな音楽を持ってきても良いのですが、みんなが知っている曲であれば、打ち合わせをほとんどすることなくいきなり演奏することができて、すぐに演奏を楽しむことができます。このみんなが知っている曲のことを「ジャズ・スタンダード」と呼びます。この記事ではオンライン音楽教室「フォニム」で扱っているジャズ・スタンダードを見ていきましょう。これらの曲を知っていれば、いきなりジャム・セッションに飛び入り参加することもできるようになりますよ。

「星に願いを」When you wish upon a star

ディズニーの映画『ピノキオ』の主題歌で、1940年に発表されてから莫大な量のカバーが行われ、現在でも根強い人気を誇っています。ジャズを全く知らない人に対しても有名なため、始めの1小節が流れただけで、会場は盛り上がることでしょう。

よく演奏されるキー

・in C Major(ハ長調)

このキー以外でも演奏されることがよくあります。

フォニムで扱う講座

・ピアノ講座(初級)

習い始めてから約1カ月後に演奏します。

「ソー・ホワット」So what

直訳すると、「だから何?」というタイトルですね。伝説的トランペット奏者マイルス・デイビスの代表作です。主題がベースで演奏されるという一風変わった曲になっています。コードはDmとEbmの二つのみで、ソロは原曲が分からないほど自由に演奏するのが一般的です。

よく演奏されるキー

・in D Minor(ニ短調)

ベースが主役ということもあって、このキー以外で演奏されることはほとんどありません。

フォニムで扱う講座

・ピアノ講座(初級)

左手の練習として、習い始めてから約2~3カ月後に演奏します。

「A列車で行こう」Take the “A” train

スウィング・ジャズの大家デューク・エリントンの代表的なナンバーです。1941年にレコードが発売されると、世界的に爆発的な人気を博し、数えきれないほどのカバー録音がなされました。全音音階(ホールトーン・スケール)を用いた特徴的な前奏から始まり、陽気で軽快なテーマが流れます。

よく演奏されるキー

・in C Major(ハ長調)

フォニムで扱う講座

・ピアノ講座(初級・中級)

ピアノソロでベース、旋律、コードを弾く練習として、ピアノ講座の最終版に演奏します。

「虹の彼方に」Over the Rainbow

ミュージカル映画「オズの魔法使い」の主題歌で、ジュディ・ガーランドが歌ったことで、ガーランド自身と「虹の彼方に」を世界に知らしめました。オズの魔法使いの公開直後に、伝説的なピアニスト、アート・テイタムによって演奏され、それ以降数々のプレイヤーによってカバーされてきました。

よく演奏されるキー

・in E flat Major(変ホ長調)

・in F Major(ヘ長調)

・in C Major(ハ長調)

これと言って決まったキーが無いため、よく打ち合わせをする必要があります。

フォニムで扱う講座

・基礎講座(全講座共通)

無料で受けられる基礎講座で、楽譜の読み方の練習として使います。楽譜や演奏も視聴できるので、ぜひ無料会員登録をして見てみてください。

「ムーンライト・セレナーデ」Moonlight Serenade

スウィング・ジャズの代表曲ともいえるほど有名な曲で、トンボーン奏者のグレン・ミラーによって作曲されました。グレン・ミラー楽団のバンドテーマにもなっています。妖艶さを漂わせる、お洒落な曲です。

よく演奏されるキー

・in E flat Major(変ホ長調)

・in F Major(ヘ長調)

特にキーに決まりがあるわけではないので、打ち合わせでキーを決めます。コードも様々なパターンがあるため、よく打ち合わせをしましょう。

フォニムで扱う講座

・エアロフォン講座(初級・中級)

・デジタルサックス講座(初級・中級)

エアロフォン講座中級が始まって、3カ月~4カ月目に、いよいよジャズの演奏に取り組みます。この「ムーンライト・セレナーデ」で、ジャズの感覚をつかみます。

「プア・バタフライ」Poor Butterfly

作曲家のレイモンド・ハッベルが、プッチーニの有名なオペラ「蝶々夫人」に触発されて書いた曲です。抑揚のある美しいメロディーが特徴で、様々なハーモナイズ(和声付け)が可能です。実際にセッションする場合はどの楽譜を使うのかを決めておくのが良いでしょう。

よく演奏されるキー

・in A flat Major(変イ長調)

これも特に決まっているわけではないので、打ち合わせの必要があります。

フォニムで扱う講座

・エアロフォン講座(初級・中級)

・デジタルサックス講座(初級・中級)

エアロフォン講座中級が始まって3~5カ月目(初級だと5~8カ月目)は、オペラにちなんだ曲を演奏します。そのなかの一曲として登場します。

「イパネマの娘」The Gril from Ipanema

1960年代、ブラジル音楽を起源とするボサ・ノヴァが大流行しました。ボサ・ノヴァをたどるとサンバにたどり着くのですが、新しい(ノヴァ)サンバとして、主にリオデジャネイロの海岸に位置するイパネマを中心に、白人たちによって盛り上がった音楽です。とくにこのボサ・ノヴァの流行ときっかけになった「イパネマの娘」はジャズ・スタンダードとしてもよく演奏されています。

よく演奏されるキー

・in F Major(ヘ長調)

中間部の転調が複雑なので、どんな調で来ても演奏できるように、良く練習する必要があります。

フォニムで扱う講座

・エアロフォン講座(初級・中級)

・デジタルサックス講座(初級・中級)

エアロフォン講座中級の4~6カ月目にラテン音楽を学ぶときに取り上げます。

「テナー・マッドネス」Tenor Madness

テナー・サックス奏者ソニー・ロリンズが制作したアルバム「テナー・マッドネス」の巻頭を飾る作品です。同じくテナーサックスのジョン・コルトレーンと共演している珍しい形態となっています。コードはシンプルなブルースとなっており、テーマも明快なため演奏が楽しい曲です。

よく演奏されるキー

・in B flat Major(変ロ長調)

このキーは、テナーサックスでin C Majorで吹いたときのものとなります。「テナー・マッドネス」のタイトルに相応しいキーですね。

フォニムで扱う講座

・エアロフォン講座(初級・中級)

・デジタルサックス講座(初級・中級)

エアロフォン講座の集大成として、ブルースを演奏するときに取り上げます。

「C・ジャム・ブルース」C Jam Blues

1942年にデューク・エリントン(何度も出てくる名前ですね)が作曲した、極限までシンプルなテーマのブルースです。なんと、使われている音はソとドだけ。だからこそ、ソロは極限まで自分を発揮することができます。テーマも独特なノリがあって楽しく、ブルースを始めるときはぜひこの曲から始めてみてください。

よく演奏されるキー

・in C Major(ハ長調)

タイトルそのまま、in C Majorで演奏するのが普通です。ただ、B♭管の楽器、例えばトランペット・クラリネット・ソプラノサックス・テナーサックス等が主役のときは、in B flat Majorで演奏されることもあります。

フォニムで扱う講座

・エアロフォン講座(初級・中級)

・デジタルサックス講座(初級・中級)

いつでもセッションに出かけられるように、エアロフォン講座の最後にこの曲を取り上げます。

「私のお気に入り」My Favorite Thing

大人気ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の中の一曲で、雷を怖がる子供たちに、好きなものを思い出して元気を出そうと歌いかけるシーンです。軽快な3拍子でジャズ・ワルツとして演奏するのが一般的ですが、バラード調に演奏してもよく似合い、様々なカバーがされています。

よく演奏されるキー

・in E Minor(ホ短調)

この曲はほとんどの場合in E Minorで演奏されます。素朴ながら独特な雰囲気がよく出るキーです。

フォニムで扱う講座

・エアロフォン講座(初級)

・ピアノ講座(初級・中級)

エアロフォン講座では、オクターヴキーを使う練習として初級の初期に登場しますが、ピアノ講座では、ソロでオーケストラのような効果を演奏するために最終盤で演奏します。

もっとジャズ・スタンダードを知りたいときは「黒本」

ジャズ・スタンダードを227曲まとめた「ジャズ・スタンダード・バイブル」という本は、日本でジャズをするなら必携の楽譜です。通称「黒本」といいます。セッション会場に行けば必ず置いてあるといっても過言ではなく、各プレイヤーも一人一冊以上持っているような楽譜になっています。曲によってはキーやコードが統一されていないものも多いですが、とりあえず黒本に従っておけばいきなりセッションすることができます。4000円しないで買える楽譜ですので、ジャズを始めたい方はまずこの黒本を手に入れましょう!

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