クラシック音楽を趣味にするなら知っておきたい西洋音楽史を見ていきましょう。時代のおおまかな流れを捉えて、練習している曲がどの時代に属するかを把握するだけで、音楽に対する見通しはグッとよくなることでしょう。
時代の区分
歴史を見るときには区分が重要になります。とはいえ、その境目で音楽がガラッと変わるわけではありません。たとえば西洋音楽では、1750年を境に、バロック音楽から古典音楽と変わったと言われますが、急に音楽が変わったわけではなく、徐々に古典音楽の様式が出来上がりつつ、バロック音楽にこだわる保守的な作曲家もいるなかで、グラデーションのように時代が変わっていきます。そのうえで、西洋音楽を7つの時代に分けましょう。
・中世の音楽
・ルネッサンス音楽
・バロック音楽
・古典派音楽(クラシック音楽)
・ロマン派音楽
・近代音楽(モダン音楽)
・現代音楽(コンテンポラリー音楽)
おおよそこのようになっています。
各時代の代表を知ろう
それぞれの時代を細かく見ていくと、専門的になりすぎるので、各時代で最も有名な曲を一曲だけ取り出していきましょう。つまり7曲を紹介するわけですが、この7曲を知っているだけで堂々とクラシック通を名乗れるほどの知識になるかと思います!
中世(600-1450)
・グレゴリオ聖歌
中世は現在とは違う形ではありますが、しっかり音楽理論が整備されており、独特の情緒がある音楽になっています。中世で最も大事なのは8~9世紀ごろにまとめ上げられた旋律集「グレゴリオ聖歌」でしょう。
キリスト教の儀式に典礼文を歌うように読み上げる文化があり、それがグレゴリオ聖歌としてまとめられました。日本人にとっては声明(しょうみょう)、あるいはお経のようなものと思うとわかりやすいかもしれません。西洋音楽の原点ともいえる美しい音楽です。
ルネッサンス音楽(1450-1600)
・パレストリーナ「ミサ・ブレヴィス」
14~15世紀ごろ古代ローマ・ギリシャの文化の再興運動が起こりました。これを「ルネッサンス運動」と言います。もちろん音楽にも大きな影響を与え、絢爛華麗な音楽がたくさん作られました。そのなかでも特に重要なのはイタリアの作曲家パレストリーナです。
大きな教会で両翼に配置した2つ合唱団の掛け合いは現代の人も圧倒させる迫力があります。
バロック音楽(1600-1750)
・バッハ「管弦楽組曲第3番よりエール」
ルネッサンス音楽は全体の迫力は素晴らしいものでした。それに対してバロック音楽は優美な旋律を歌うのが特徴です。楽器の発達も著しく、難しいフレーズも演奏できるようになってきたことから、様々な装飾が施された美しい旋律が多く生み出されました。あまりにも装飾がこらされて「ゆがんだ真珠」のようだ!という悪口として「バロック」という言葉が作られましたが、今では時代を表す言葉になっています。
ここで紹介したバッハの「エール」も非常に美しい旋律で、ヴァイオリンソロに編曲された「G線上のアリア」としても有名です。
古典派音楽(1750-1830)
・モーツァルト「交響曲第40番」
「古典」は「クラシック」とも言います。「クラシック」は「階級的」という意味があり、貴族文化が最高潮に達した時代です。世界史的には1789年に起きたフランス革命の影響が大きく、民衆の力が強くなってきた時期でもあります。貴族文化の最後の輝きと言ってもいいかもしれません。
ウィーン古典派の大作曲家モーツァルトは、知的な様式美を持つ交響曲を番号がついているだけで41曲も作曲しましたが、40番はそのなかでも特に有名です。
ロマン派音楽(1830-1900)
・ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」
ロマンという言葉からそのまま想像できるような情感や情動が前面に押し出されたのがロマン派音楽です。もともとは「ロマン」は「ローマ」を語源とする言葉ですが、転じて「民衆的な」という意味があります。「クラシック」と対立していますね。
ここで紹介したブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」はいかにもロマン派音楽で、楽器の魅力を存分に活かした技巧と、美しい旋律が特徴的です。
近代音楽(1900-1945)
・ストラヴィンスキー「春の祭典」
ロマン派までは、なんとかヨーロッパ内に収まっていましたが、近代音楽は世界中の文化が入り乱れる時期となり、非常に広い概念となってしまいます。荒々しい音楽だったり、逆に神秘を追求したりと、様々な方向で音楽の可能性を追求していきました。
ストラヴィンスキーはロシアの作曲家で、架空の民族の生贄の儀式を題材としたバレエ音楽「春の祭典」は伝説的なエピソードを持つ名曲です。
現代音楽(1945-2020)
・リゲティ「アトモスフェール」
科学技術や哲学の発展に伴い、音楽も急速に発展していきます。現代音楽における大きな問いは「音楽とは何か」、でしょう。様々な作曲家が「音楽とは何か」に対する答えを曲として発表していきます。とくに現代音楽を代表する作曲家ジョン・ケージの「4分33秒」は有名です。
今回ここで紹介するのは「2001年宇宙の旅」でも用いられて有名になったリゲティ作曲の「アトモスフェール」です。オーケストラの奏でる響きの塊が徐々に変化しながら、生まれたり消えたりを繰り返し、時間の流れを構築しています。
今日の音楽(2020-)
70年ほども続いた現代音楽も、かなり「古典的」に聞こえるようになってしまいました。さらに新しい響きや、驚きと感動を求めて多くの作曲家が名作を生み出し続けています。時代の厳しい審査を通り抜けていない生まれたての音楽は玉石混交ではありますが、同じ時代を生きる作曲家の音楽にも耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
どの時代の曲なのかを知る
7つの時代が大体理解できたところで、練習中の曲や、コンサートに聴きに行った曲がどの時代の曲なのかを調べてみましょう。
たとえば、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を聴いたとします。これは果たしていつの時代なのでしょうか。
そんな時は「ベートーヴェン wikipedia」で検索です!
するとこのような項目がありますね。
「ジャンル 古典派音楽」の部分に注目です!
基本的に時代の区分は曲ごとではなく作曲家ごとに割り当てられていますので、「運命は古典派の音楽なんだな」と思って貰えればOKです。
作曲年や、作曲家の国籍など、様々な情報はありますが、まずはこの時代区分を知ることが西洋音楽史の第一歩です!
西洋音楽史を知って、さらにクラシック音楽に親しんでいきましょう。