細かい音符が続くパッセージ、指を動かしたいのに動いてくれない!綺麗に音がつながらない!という悩みを持ったことはだれしもがあるはず。そんなときに役立つリズム練習を伝授します。
リズム練習の意義
難しいパッセージを練習しているときに一番基本になるのはゆっくり練習です。ミスなく弾けるほどスピードを落としてから、徐々に速くしていく、という方法で大体の難しいパッセージに対応できますが、それでも全く弾けるようにならないような難しいパッセージに出会うこともあります。
そんな時はリズム練習をしてみましょう。リズム練習は主に二つの効果があります。
滑らかな演奏ができるようになる
速い動きを練習する際に、一音一音見ていってもなかなか弾けるようにはなりません。一音を練習するのではなく、音の繋げ方を練習するのがポイントになります。リズム練習では、音を規則的にまとめていくことで、音の繋げ方を部分的に練習することができます。
両手が揃うようになる
リズムをつけると、拍がわかりやすくなり、体全体で乗ることができるようになるので、拍頭が合いやすくなります。これは両手で速い動きをしているときに揃える練習になります。
また、リズムがつくことで、旋律への理解も深まることでしょう。
実際にリズム練習をしてみよう
モーツァルトの有名なピアノ曲「トルコ行進曲」の中間部分の練習をしてみましょう。ピアノ中級になると誰しもが通り、そして苦戦することになるパッセージではないでしょうか。
左手の伴奏はすでに弾けるようになったものとして話を進めていきます。
まずは指使いを確定させる
楽譜によってはすでに指使いが書いてあるかと思いますが、書いていない場合や、楽譜の指使いが気に入らないという場合は、自分にあった指使いを決めていきましょう。
なるべく動きを少なく、1の指を白鍵にもってくるのがポイントです。
たとえば、次のように指使いを決めてみましょう。カッコで囲ったところを「ポジション」といい、手首を動かさずにそのままの指使いで弾くことができます。(4つめのカッコだけは、シ♮とシ♯の両方を2の指が請け負います)
このように指使いを決めるだけでもかなり弾きやすくはなると思いますが、それでも指がなかなか動いてくれない、というときに役に立つのがリズム練習です。
付点のリズム
最もよく使うリズム練習が、付点のリズムです。付点のリズムはリズム自体が簡単なので弾きやすいのがポイントです。拍の裏から次の拍までが速いので、そこをまとめるように弾くのがコツです。
実際に付点のリズムに直すとこのようになります。1回目のポジションの移動は、付点のおかげで時間を取ることができるため弾きやすくなっています。ただし、2回目のポジション移動は少し大変です。
このように、動きが大きいところを取り出して練習できる、というのが付点のリズムのポイントです。付点のリズムで弾きにくいと感じるところは、もとのリズムに直したときに崩れやすいところでもありますので、重点的に練習するとよいでしょう。
逆付点のリズム
2回目のポジション移動は付点のリズムで重点的に練習することができましたが、1回目のポジション移動はそのまま通り越してしまいました。そこで、付点のリズムを補って練習することができるのが、逆付点のリズムです。
このリズムはなかなか実際の曲の中には登場しないので、弾きにくいと感じるかもしれません。拍頭の短い方の音符にアクセントを置いて(強めに)演奏したり、左手の伴奏と合わせて弾くなど、拍を強調して弾くことでリズムがわかりやすくなります。
付点・逆付点のリズム練習をセットで行うことで、どの2音間の繋がりも取り出して練習をすることができます。しかし、これでもまだ弾けるようにならない、という場合は、さらなるリズム練習に進みましょう。
3連符のリズム
2音だけ繋ぐことができても実際の曲は止まることなく続くのですから、もう少し繋げる個数を増やしてみましょう。4音をまとめてつなぐ練習が3連符のリズムです。そのまとまりを弾く前に、4音を繋げて弾くイメージを持つことがポイントになります。闇雲に弾き始めるのではなくて、上手くいく見通しを立ててから弾き始めましょう。
付点のリズムの場合は、ポジション移動のみを取り出して練習する形になっていましたが、3連符のリズムの場合は、次のポジションに入ったあとに、安定して弾く練習になります。崩れない弾き方をするためにとても良い練習になるため、おすすめです。
また、このリズムでこの曲を練習すると、4音下がる形が繰り返されるということが強調されますね。このように、リズム練習で曲の構造が見えやすくなることがあるのも面白いところです。
逆3連符のリズム
付点のリズムの練習をしたときはそれを補完するように逆付点のリズムでも練習しました。3連符のリズムでも同じように逆3連符のリズムを作ってみましょう。
4音ごとにグループにして弾く方法という意味でいえば、あと2通りありますが、自然なリズムではないため慣れないうちはそもそもリズムをキープするので精一杯になるかもしれません。ただ、慣れてきたらぜひチャレンジしてみましょう。
楽譜をみただけでも難しそうですね・・・。
アクセント練習
リズム練習は、いくつかの音をまとめてグループにし、そのグループ動きに慣れるという効果がありました。これができるようになってきたら、このグループをさらにまとめていくことで、滑らかな演奏ができるようになります。そこで、次にグループを繋げるアクセント練習に移りましょう。これもリズム練習の一種と捉えることができます。
拍頭アクセント
まずは、拍頭にアクセントをつける練習をしましょう。2音に一回アクセントをつけると、付点のリズムと同じような効果が得られます。
この練習の時の注意点は次のようなものです。
・リズムは正確に
アクセントにリズムが引きずられて拍頭が重くならないように気をつけましょう。
・アクセントのついていない音は弱く
この練習は全ての音をコントロールできるようになる、という練習も兼ねているので、アクセントのついていない音は弱く弾くことを心がけましょう。特に親指で弾く音やポジション移動のさいに大きな音にならないようにすることが大切です。
また、2音に1回だけでなく、4音に1回、小節の頭のみ、などバリエーションをつけていきましょう。
裏拍アクセント
表拍のアクセントができたら、裏拍にもアクセントを入れていきましょう。
これを伴奏と一緒に弾くと、右手と左手のリズムがズレるため、非常に難しくなります。これ自体も練習になりますが、また別の技術になってしまうため、難しいと思う場合は片手だけで練習すると良いでしょう。
練習の意義を理解して、応用していこう
ピアノを闇雲に練習することでも、指が鍵盤の位置を覚えていくことや、正しい音がわかることでそれなりには上達していきます。しかし、どこかで行き詰まったり、上達の速度が遅いと感じるようなるでしょう。その時は、その時に必要な練習をしていくことが重要になります。
リズム練習は、冒頭でも述べたように、
・滑らかな演奏ができるようになる
・両手が揃うようになる
ということに関して有用な練習方法ですので、どうしてもパッセージがでこぼこしてしまうというときや、両手が揃わないというときに試してみましょう。
また、速い6/8拍子のように付点のリズムにすることができない時もあります。このような時は、1音を長く、他の音を短くする、というリズムを作って練習すると効果的です。
リズム練習の意義がわかってくると、練習の目的に沿ったリズムを自分で作り出すこともできるようになってきます。
ぜひ、リズム練習を普段の練習に取り入れてみてください。