楽譜が無い曲の音源を聞いただけで演奏するのが「耳コピ」です。「この曲は耳コピで演奏してるよ」などと言ったら、おおっ!となりますね。それだけ耳コピは難しいのですが、少しずつ練習することによって着実にできるようになっていきます。この記事ではそんな耳コピの練習とコツをお伝えします!
楽譜が読めない人へ、耳コピのススメ
音楽を趣味にしている方でも楽譜が読めない人の方が多数派です。そんな楽譜にまだ慣れていない方でも、憧れの曲に挑戦したい!となったら、耳コピをしてみましょう。
耳コピというと難しいようですが、あなたが口ずさむことができる有名な旋律は、楽譜を読み込んで練習して歌えるようになったわけではなく何度も聞いているうちに、自然に歌えるようになったものだと思います。
そして、それはすでに耳コピができる能力があることの証拠です!耳コピという言葉の響きを恐れずに、挑戦してみましょう。
まずは何も考えずに聞く
耳コピをする、ということは、何度も1つの曲を聞いて、自分の中に完全に曲を入れる必要があります。ですから、本当に大好きな曲でなければかなり苦痛な作業になってしまいます。そんなわけで、2~3回、何も考えずに曲を通して聞いて、「あー好きだなー」と浸るのが大事です!
これは根性論でもなんでもなく、耳コピするためのモチベーションを高めるとともに、曲の雰囲気やリズム・コード感を身体の中に取り入れていくという意味があります。はじめから5秒おきに区切って聞き取っていってもなかなか耳コピは完成しません。

この何も考えずに聞いて浸る、というのは始めだけでなく、耳コピ作業中にも何度か挟んでいきましょう。
構成を聞き取る
そして、次にメモ用紙に、構成を書きとっていきましょう。一般的なポップスの場合は、
イントロ Aメロ Bメロ サビ 間奏 Cメロ アウトロ
から成り立っていることがほとんどです。
・イントロ(前奏)
歌や旋律が入ってくる前に短めに演奏される部分です。イントロは曲の頭ですから、もっとも印象に残るところでもあります。バシッと決めるようなイントロ、ふわふわと雰囲気を作り出すようなイントロ、リズムをどんどん重ねて盛り上げていくイントロ、様々にあります。曲によっては楽器で演奏することが難しいようなイントロもあります。
・Aメロ
一番始めに入ってくる旋律です。起伏は抑えめで、歌詞も感情をあまり出しすぎず世界観を作るようなものであることが多いです。
・Bメロ
Aメロとサビの橋渡しをするような場面で、緊張感が高まります。ビート感も変わって音量も徐々に大きくなっていきます。
・サビ
曲の中で最も盛り上がり、起伏も大きく感情の表出も強い場面です。曲の顔とも言える部分で、曲のタイトルでは伝わらないけどサビを歌えば伝わる、ということもよくありますね。
・間奏
サビの後に挿入されます。ギターソロであることが多い場面です。サビで盛り上がりすぎた熱を覚ますような場面であったり、歌手以外にスポットライトを当てる役割があったりします。曲によってはかなり印象的な間奏であることも多いですね。
・Cメロ
2番が終わった後に曲の雰囲気を変える場面となります。起承転結の「転」にあたるような印象を受けます。曲中に1回しか登場しないため、カラオケで覚えてなくて大変!となりやすいところでもありますね。Cメロの後は大サビ(あるいはラスサビ)という最も盛り上がるサビに入るのが恒例です。
・アウトロ
曲の終結部分にあたります。曲の終わらせ方はアーティストの個性が最も出るところといっても過言ではありません。
模範的な構成は、
イントロ →
1番:Aメロ → Bメロ → サビ →
間奏 →
2番:Aメロ → Bメロ → サビ →
間奏 → Cメロ → サビ →
アウトロ
となります。これを軽く変形させたような曲であったり、全く異なる独自のアイディアの曲だったりすることもあります。全体の見通しは非常に大切ですので、耳コピをする際には、まずこれを把握するようにしましょう。
例として、米津玄師の「ピースサイン」を見てみましょう。
0:00 イントロ
~1番~
0:22 Aメロ
0:42 Bメロ
1:03 サビ
1:28 間奏
~2番~
1:37 Aメロ
1:56 Bメロ
2:17 サビ
2:42 間奏
2:52 Cメロ
3:11 間奏
3:29 サビ
Cメロ以降が少し模範的な例と異なりますが、ほとんどそのままなぞっていますね。このように聞き取るのが難しいと思った場合は、次のようなざっとした区分でも大丈夫です。
・サビ
・サビ以外の歌
・歌が無い部分
これだけでも見通しはかなり良くなります。
旋律を覚える
構成が分かったら、AメロとBメロとサビの旋律をそれぞれ覚えていきましょう。楽器を使わずに、口ずさむのがポイントです。大好きな曲を耳コピしようとしている場合は、もうすでに覚えているかもしれませんね。
旋律を覚えたら、手拍子をしながら歌ってみましょう。手拍子をしながら歌うことができると、リズムが身体の中にスムーズにはいってきます。これが難しい場合は、歌わずに音源を流しながら手拍子をするところから始めてみましょう。
手拍子の間隔は、気持ちいいと思えるくらいの場所を狙っていきます。

さきほどのピースサインでは、これくらいのタイミングが良いでしょう。この倍や半分で手拍子を打つのは、せわしなくなりすぎたり、ゆったりしすぎたりで、少し違和感があると思います。
手拍子をしながら歌えるようになったら、次はこの速度をゆっくりにして歌ってみましょう。半分の速度になるくらいまでゆっくりにしてみましょう。
ゆっくりにして歌うというのは、虫眼鏡で旋律を見るようなもので、細かいところまで誤魔化さないということです。歌だと多少不明瞭でもなんとなく歌うことはできるのですが、楽器の場合は決められた音の中で旋律を作らなければいけないため、不明瞭のまま演奏するのは困難です。
キーの確認
さて、旋律が分かってきたら、キー(調性)は何かが分かる必要があります。実はこれが一番難しいところでもあります。
ひとつの方法は、インターネットの検索で調べてしまうことです。
調べ方としてはいくつか方法があります。
「曲名 原曲キー」
で検索してみましょう。ただし、これで見つかる可能性は少し低めです。そこで、もう一つの方法です。
「曲名 楽譜」
でイメージ検索してみましょう。すると、サンプルの楽譜がズラーっと並ぶはずですので、その楽譜の左端を確認して調号をチェックします。もしくは、いくつか楽譜を覗いてみて、
原曲キー:~~
と書いてある部分を探してみましょう。有名な曲なら大抵これで見つかるはずです。
これで見つからない場合、お手持ちの楽器を使ってキーを判断することになりますが、これは少し大変です。この方法の説明にはそれだけで1つの記事を使ってしまいますので、いずれ別の記事で説明しますね。
どうしても原曲キーが知りたいけど自力ではわからない!という方には裏技のご紹介です。
フォニムにログインして、コミュニティに質問してみましょう。
「~~の原曲キーが知りたいです!」
と書き込むとフォニム・スタッフが答えてくれるかもしれません・・・。
なお、曲によっては細かく転調してキーを追うのが難しかったりすることもあります。このような曲の耳コピは、慣れてきてからにしましょう。
音階の練習!(もしくは設定変更)
原曲キーがわかったら、次はそのキーの音階の練習をしましょう!音階に使われている音がわかると、グッと楽になります。
音階がわからない!難しい音階は指が回らない!という方は、設定に頼ってしまうのも手です。
・電子楽器の場合
設定のTransposeでC-major(ハ長調)か、A-minor(イ短調)に合わせてしまいましょう。

・ギターの場合
カポタストを使って、キーを上げてしまうのが楽です。
その他のアコースティックの楽器の場合は、調の変更は気軽にはできませんので、どんな調でも対応できるように練習あるのみです。
はじめの旋律の音を確定する
さて、それではいよいよ、耳コピの本番です。始めの数音の音を確定しましょう。
「ピースサイン」の例を見てみます。この曲はCm(ハ短調)です。♭3つ(ミとラとシが♭)の調ですが、電子楽器で移調してAmにする場合は「+3」に設定します。
Aメロの冒頭「いつかぼくらの」の音だけでも取れれば十分です。
まず、音源に合わせて歌いつつ、始めの音を伸ばしてみます。伸ばしながら、楽器のキーの内部の音を弾いて、ピッタリ合う音を探しましょう。
・移調していない場合(アコースティックの楽器など)
Cmの調なので、ド レ ミ♭ ファ ソ ラ♭ シ♭
の中からピッタリあう音を探します。今回はシ♭がピッタリきましたね。
・移調している場合(電子楽器)
ピアノなら白鍵など、♯や♭がつかない音の中から探します。つまり、
ラ シ ド レ ミ ファ ソ
の中からピッタリあう音を探します。今回はソがピッタリきましたね。
簡単に書いていますが、慣れないうちは結構大変なポイントだったりします。
うまくいかない原因には次のようなものがあります。
・そもそも楽器の音と声が合っているのかわからない
→普段から演奏しながら歌う練習をするのがポイントです。
→管楽器の場合は普段練習している曲を、声でも歌ってみる練習をしましょう。
・声の高さを一定に保つのが難しい
→ゆっくり歌う練習をしましょう。
・音を探している間に頭が混乱してしまう
→何度も曲を聞いてやりなおしましょう。曲全体を通して聞いたり、音階の練習をしたりするとリフレッシュになります。
1音目が確定できたら、そのまま、始めの旋律を楽器で演奏できるようにしていきましょう。
旋律には大まかな形があり、特に出だしは山形を描くことが多いです。

歌いやすい旋律は、
・山型
・谷型
・上行
・下行
・停滞
のいずれかになります。今回パターンだと、
山型→下行→谷型→下行
となりますね。
このように旋律の概形を捉えることで、旋律が目に見てわかるようになります。あとは直感的に楽器で演奏しつつ、微修正していくと旋律を正しくとることができるようになります。
ここが難しい、全然できない、と思う時は次のような可能性があります。
・1音目を外している
→出だしの音は曖昧に歌われることもあるため、はずしてしまうこともあります。そのときは旋律の最後の音など、分かる音一つでも良いので見つけてみましょう。
・旋律が複雑すぎる
→曲がそもそも難しいというパターンですね。このような場合は、まず良く聞き、正確に真似して歌えるようになるのがポイントです。
旋律の聞き取りを繰り返して、構成に沿って練習
このように、旋律を一つ一つ取っていき、Aメロを完成させたらそれを練習し、次にBメロ、とやっていきましょう。やみくもに聞き取りを続けていってもなかなかゴールが見えませんが、構成が分かっていると、同じ旋律が出てくれば聞き取る必要が無くなり、手間が半分以下になります。
このようにしていき、旋律を演奏できるようになったら、立派に耳コピの完成です!

ベースを聞き取る(ピアノ・ギターの場合)
ピアノやギターの場合は旋律だけでなく伴奏も演奏したくなりますね。この場合は、コードを聞き取る必要があります。
コードを正確に聞き取るのは、相当な訓練が必要です。また、知識もそれなりに必要になってきます。

ここでは簡単にベースのみの聞き取りをしてみましょう。ベースが分かればコードも半分以上わかったようなものです。
ベースは独特の音色があり、多くの場合拍の頭に鳴り、どの音がベースか、は判別しやすいと思いますが、音程が不安定であったり、ドラムと混ざってしまったりして聞き取りずらいことも多いです。
「ピースサイン」のAメロはかなり分かりやすいベースとなっています。
・移調していない場合(アコースティック)
ド→ファ→シ♭→ド を繰り返していることがわかります。
・移調している場合(電子楽器)
ラ→レ→ソ→ラ を繰り返しています。
ベースを聞き取ってしまえば、あとはその音を元にコードを作ることができます。
・移調していない場合
ド→ファ→シ♭→ド は、Cm→Fm→Bb→Cm
すべてCマイナーの音だけを使っていることがわかります
・移調している場合
ラ→レ→ソ→ラ は、Am→Dm→G→Am
すべてAマイナー(白鍵)の音だけを使っていることがわかります
これには例外も多くありますが、うまくいかないな、とおもったところは少し飛ばして、分かるところを取っていきましょう。

耳コピのコツのまとめ
ここまでの耳コピの方法をまとめてみましょう。
①何も考えずに曲を聞いて浸る!
②構成をメモする
③旋律を手拍子しながら歌ってみる
④曲のキーを確認する
⑤楽器の音を探していく
⑥ベースを聞き取る
耳コピは時間をかけて練習していくことで、少しずつできるようになっていくものです。
鼻歌を歌うような感覚で、楽器で知っている旋律を鳴らしていく、というのが耳コピの第一歩になります。
ぜひ耳コピを身に付けて、あこがれの名曲を自分の曲にしていきましょう!