ピアノ練習をしてもなかなか思う通りに指が動かなかったり、部分練習だと上手に弾けるのに全体を通すと突っかかってしまう、ということはありませんか?そんなときは視線の動かし方を意識すると楽になることがあります。この記事で皆さんの練習の悩みを少しでも解消できたら幸いです。

視野を知る

ピアノは主に右手と左手と楽譜の3点を見ることになります。視野というのは広いようで、はっきりと文字を確認できるできる視野は2.5度とも言われており、これは50cm離れたところで直径2cm強しかありません。鍵盤であれば1つ分、楽譜であれば3~4音符分程度であり、思っているより狭いものです。

一方で少しでも見える全体の視野は120度あり、これだけあれば、楽譜に視線を置きつつ鍵盤の端から端まで見ることも可能です。

中央に近いほど細かい図形の把握が可能で、外に向かうに従って形や色の認識が曖昧になり、視野の端では動いているかどうかのみ把握ができます。

視線の動きに注目する

それでは、実際にピアノを弾いてみて、視線の動きを追ってみましょう。次のようになっていたら、改善の余地があります。

①楽譜を見る

②左手の動く先の鍵盤を見る

③右手の動く先の鍵盤を見る

④楽譜を見て再度確認する

⑤鍵盤を見て弾く

これは極端な例ですが、この視線の動きを想像してみたら、大変な動きをしていることがわかるでしょう。

一方で、曲が難しくなってきたら、どうしても見る場所が増えてしまい、どのように動きを減らせば良いのかが分かりづらいかと思います。それを確認していきましょう。

視線の動きを減らす

曲を完全に弾きこなせる状態になれば、目を瞑っていても演奏ができるものです。むしろ目を瞑っていたほうが鳴っている音にのみ集中できる分、演奏も表現豊かになります。

とはいえ、練習中にはそうもいきません。練習中はできるかぎり楽譜の先のほうまで読むということが大切になります。

次の音だけを見るのではなく、塊で覚えてしまい、さらにこれを弾くときにはどのような手の動きになってどのような音が鳴るのか、ということをイメージしてから弾くと、視線は楽譜→鍵盤という一回の移動だけで1~2小節を弾くことができます。

特に次に弾く音をイメージするということはとても大切で、これをするかしないかで弾きやすさは大きく変わってきます。

まずは、楽譜と鍵盤の視線の往復をなるべく少なくするところから始めてみましょう。

弾いている先を読む練習

さて、ここからは中~上級者向けの内容になります。

楽譜に慣れてくると、今弾いている先を次々に読むことが大事になります。今弾いているところを読んでいるのでは遅いので、これから弾く2~4秒後くらいをずっと読み続けながら弾きます。集中力が必要になり、脳をフル回転させなければ難しいのですが、これも慣れてくると自然にそのように楽譜を読むようになります。

これに関しては、日本語の文章の音読でも練習することができます。句読点から句読点までを滑らかに、自然な抑揚を付けて読んでみてください。読んでいる部分は声に出している部分の10文字くらい先になるのではないでしょうか。楽譜も同じ感覚で読むようにします。

鍵盤感覚を身に付ける

さらに大切なのは、鍵盤感覚です。鍵盤感覚とは、目で鍵盤を見ることなく、鍵盤の位置を把握することです。もっとも基本的なのは、オクターヴはどのくらい手を広げるのか、という感覚を身に付けることです。鍵盤感覚が鋭くなってくると、激しい跳躍が連続していても、鍵盤を見ることなく正確に弾くことができるようになってきます。

視線の動きが激しいと、難しく感じてしまう

手の動きの激しさよりも、視線の動きの激しさのほうが、難しいと感じる原因になりやすいです。視覚情報は意識の大きな部分を占めますから、視線が忙しいと音楽の最も大切な音をあまり聞けなくなってしまったり、リズムを身体の中で保つことが難しくなってしまったりします。

視線の動きを見直して、楽にピアノを弾いてみましょう。