ピアノを始めて最初の壁といえば、「右手と左手で別々の動きができない!」ではないでしょうか。

ピアノを始めて数週間で別々の動きをしなければいけない曲に出会います。ここを乗り越えられると、ピアノ入門から初級への道が開けてきます。

この記事では、そんな悩みを解消して、ピアノを両手で弾けるようになるコツについて解説します!

左右の手がバラバラに動くのは音楽だけ?

よく、「日常では両手がバラバラに動くことはありません。だからピアノでは特別な訓練が必要です」と言われますし、そう思っている方も多いように思います。

しかし本当にそうでしょうか。

実は逆で、人間の手は左右同じ動きをするほうが少ないのではないでしょうか。右利きの方なら、包丁は左手で支えて右手で切る人が多いでしょう。自転車はかなり左右対称の動きですが、前輪ブレーキと後輪ブレーキは微妙に使い分けます。

これらのことはなぜピアノほどは難しくないように感じるのでしょうか。この理由には二つあるように感じます。

①片方の手で支え、もう片方の手で処理するから

ナイフとフォークで野菜や肉を切るところを考えてみましょう。右利きの方は、左手でフォークを持ち、切りたいものを動かないようにし、右手で切るという動作を行います。別々の動きをしているようですが、片方の手は支える役割をしているため、ほとんど動かすことがありません。

針に糸を通すような細かい作業や、靴にスプレーするとき、紙にボールペンで文字を書くとき・・・、など、多くの動作は、片手で支え、もう片方の手で処理をしています。

このような動作は人間とって自然だと言えます。逆に、両手にチョークを持って同時に黒板に文字を書くところを想像してみましょう。おそらく同じ文字でも結構難しいと思いますし、ましてや違う文字を書くのはちょっとしたショーですね。

②両方の動きがつながっているから

キャッチボールをする場面を考えてみましょう。右利きの方なら、左手で受け取ったボールを素早く右手に渡して、右手で投げます。このような場合、右手と左手は完全に役割が異なっていますが、それほど難しいとは感じません。これは、同時に別々の動作を行っているわけではなく、左手から右手へと動作が繋がっていて、意識は一つのことに集中すればよいからです。

左手でボールをキャッチしながら右手でボールを投げる、というようなことをしようと思うと途端に難易度は跳ねあがり、ほとんどサーカスのような芸当になってしまいます。

ピアノで2つの考え方を応用する

日常的な動作も、左手と右手をバラバラに動かしているわけですが、この考え方をピアノに応用していきましょう。

①-1 左手で支えて右手が動く

左手で支えて右手で処理する、といった動作を行う場合、右手に意識が向いていることでしょう。

もちろん、熟達するためには、支える手の形や、力加減をコントロールする必要がありますが、まずは動作する手を意識することが大切です。

有名な童謡「赤とんぼ」を例にとってみましょう。

右手の旋律は大きく動いていますが、左手は激しい動きがありません。ピアノはこのように左手で支えて右手が動く、という形がバランスの良い響きになります。

左手にはあまり意識をおかず、右手だけを意識して動かせるようにすると、弾きやすくなるはずです。

(左手が無意識にでも弾けるように、まずは左手の練習をすると良いでしょう)

②-1 左手と右手の動きを一連の動作にする

練習として、再び赤とんぼを次のような指使いで弾いてみましょう。

まずは次のように左手と右手を鍵盤上にセットします。

このようにしたら、曲を通してこの指の位置から変える必要はありません。そして、次のように弾いてみましょう。

片手ずつ5本の指あると考えるのではなく、両手合計で10本の指がある、というイメージです。パソコンのキーボードに慣れている人は比較的楽にできるかもしれません。

これは両手の動きがバラバラではあるものの、一つの繋がりとなっているため、頭では考えやすいと思います。ただ、リズムを正確にとったり、右手と左手の音量のバランスなどを取るのは練習が必要となります。

①と②を練習しよう

ここまでうまくできたでしょうか。

①-1 左手で支えて右手は動く が難しかった方は、まず、1小節ごとにストップして、小節ごとに弾けるようにしていきます。それぞれの小節が弾けるようになったら、それを繋げる、という意識で練習してみましょう。

②-1 左手と右手の動きを一連の動作にする は始めからすらすらとできる方はなかなかいないでしょう。特に最後から二小節目の右手と左手が入り乱れるようなところは特に難しいです。ただし、一度に1つの音しか弾きませんので、ゆっくりにしていけば必ずできるようになります。1音1音確かめながら弾いて、慣れるまではゆっくりの練習を繰り返しましょう。

応用させていこう

①と②ができれば、ここからだんだんと発展させていくことで、はたから見ると右手と左手が別の脳で動いているかのような動きをすることができるようになってきます。

①-2 左手に規則的な動きを追加する

先ほどの①-1は、左手は動かなかったため、考える必要もほとんどありませんでした。もう少し発展させて、規則的な動きを追加させてみましょう。

①-1は左手は小節の頭に1回弾くだけでしたが、今回は、全ての拍で同じ音を弾きます。

この練習は難しいです。例えば、1小節目の左手の3拍目のドと、右手の最後のレの音がズレているのですが、この右手につられて、左手が狂ってしまいます。

慣れてくると、左手はメトロノームのように無意識に同じ音を同じ速さで弾き続けられるようになるのですが、初めのうちはなかなかそのような動きはできません。そのような時は、②の考え方を少し応用するとうまくいきます。

②-2 右手と左手がズレるところをひとつながりで考える

音を弾くタイミングがズレるときは、いっそのことひとつながりの旋律のように考えて弾いてしまうと、うまくいきます。

「ソドドーーレ」

と歌うのではなく、

「ソドドー↘ド↗レ」

と歌うイメージです。。

このように考えると、左手が右手につられにくくなります。

とくにポップスでは、リズム感を持たせるために、小節の頭の音が前の拍にズレることがあります。そのような曲のときは、この考え方でつられることを防ぐことができます。

松田聖子さんの不朽の名作「あなたに逢いたくて」を見てみましょう。

このような青いラインで音を追っていくと、一連の動作として両手を動かすことができるため、考えやすくなります。

バラバラに考えるのではなくて、連動させる

ピアノ初心者の方から、よく「右手と左手がバラバラに動くのが難しいです!」というメッセージを頂きます。

実際に、右手と左手をバラバラに動かすことは、プロのピアニストにとっても難しいものです。

このように役割分担せずに、右手も左手も異なることを同時に弾くというのは非常に難しいテクニックなので、中級者になってからチャレンジすると良いでしょう。

しかし、ほとんどの曲は、右手と左手がバラバラに動いているというより、左手の伴奏の支えと右手の旋律を組み合わせて一つの曲を作っている感覚で弾くことができます。

包丁を使ったり、フォークとナイフを使ったり、お箸でご飯を食べたり、このような動作は左手と右手の動きが異なっていますが、一つの動作を、支える手と動かす手でしていると考えることができます。同じように、ピアノも左手で支えて、右手を動かす、と考えてみましょう。